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ケアラーズコンシェル

ケアラー体験記

40リットルのゴミ袋と、未来を予約する「仕込み」

ともこ

取材OK

2026.05.14


押し入れの奥から、10年前の紙おむつが出てきました。
息子が入院していた時に、いつか何かの役に立つかもしれないと取っておいたものです。それを手にした瞬間、当時の張り詰めた空気や、行き場のない不安が蘇りました。

私は26年間、この家で同居生活を送ってきました。「触るな、入るな、話すな」という無言の圧力を感じながら、相手の価値観を否定せず、波風を立てないように自分の感情に蓋をすることが、私の日常でした。40リットルのゴミ袋をいっぱいにするという行為は、単なる片付けではなく、その26年分の澱(よどみ)を一つひとつ、自分の手で確認し、手放していく作業でもありました。

今、私と夫は50代後半になり、自分たちの体力の衰えや、これからの人生を現実的に考える時期に差し掛かっています。特に、脳に特性を持ち、生涯にわたって医療的なケアを必要とする息子の存在は、私の人生の大きな軸です。

息子が、私たちが去った後も安心して、楽しく、誰かと共に生きていける環境をどう作るか。それは、残された私たちの切実な「使命」であると感じています。そのために今、私が学んでいる「仕組み」や「戦略」という言葉。以前はどこか冷たく、遠いものに感じていたそれらの言葉が、今、私の中でひとつの線として繋がり始めています。

戦略を立てることは、未来を予約すること。
仕組みを作ることは、心地よさを習慣にすること。
そして仕込みをすることは、息子が生きる未来の土壌を耕すこと。

高額な自己研鑽に罪悪感を感じたり、相手の領域に踏み込むことに迷いを感じたりすることもありました。けれど、今の私にとって「手放す」ことは、過去を否定することではなく、未来をより鮮明に描き出すための、最短で不可欠なプロセスなのだと確信しています。

相手を変えることはできません。けれど、私の思考を変え、場を調(ととの)えることで、息子へと続く風景を少しずつ変えていくことはできる。

40リットルのゴミ袋をギュッと縛ったとき、感じたのは罪悪感ではなく、静かな覚悟でした。私は、私の人生の主導権を取り戻し、愛する息子のために、今日という日から新しい未来を予約していこうと思います。