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親離れの葛藤を超えた、Excelの決断

neru

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2025.12.28

認知症の母と歩んできた在宅介護は、気づけば7年という長い月日が流れていました。
試行錯誤を繰り返し、ようやく生活のペースが掴めてきた12月のことでした。
通所介護を利用しているのでケアマネジャーさんとの面談が終わった際、一つの転機が訪れました。
来春、同じ町内に新しいグループホームが開所するというのです。自宅からわずか5分。オーナーさんとも顔見知りという、これ以上ないほど理想的な場所でした。

けれど、私の心は激しく、そして切なく揺れ動きました。 いつかは施設を、と考えてはいました。
でも、今の生活を壊したくはなかったのです。「まだ家で一緒にいられるのではないか」という思いが消えませんでした。
進行を止められないことは分かっています。今この機会を逃せば、二度とこんな好条件の場所には入れないかもしれません。
それでも、母と離れることが怖かったのです。 「いい年をして親離れができないなんて」と、自分を恥じる気持ちもありました。けれど、私にとって母の存在は、日々の仕事や生活を頑張るための何よりの糧になっていたのです。

私のエゴなのでしょうか。それとも、まだ意思疎通ができるうちに入所させてあげることが母の幸せなのでしょうか。
答えのない迷路の中で、ケアマネジャーさんは優しく寄り添い、決して押し付けではない的確な助言とともに、不安定な心の私と向き合って一緒に考えてくださいました。
自分でも資料を集め、系列のホームを見学し、新設のホーム長さんの言葉に耳を傾けました。いくつもの葛藤を乗り越え、ようやく私は「母をお願いしよう」と決心することができたのです。

最後に自分の背中を押したのは、母への想いを数字に変えたExcelのシートでした。
母が慣れ親しんだ場所を、経済的な理由で追われることだけは絶対にあってはなりません。母が80歳になるまでの5年間を想定し、年金収入は0.9掛け、支出は1.1倍と厳しく見積もって、何度も何度もシミュレーションを繰り返しました。
「これなら、最後まで守りきれる」画面上の数字が、私の覚悟を確かなものにしてくれました。

入所したからといって、私たちが積み重ねてきた介護が終わるわけではありません。
これからも壁にぶつかることはあるでしょう。けれど、そのたびに一つずつ解決し、選んだこの道を「正解」だと胸を張って言えるように、これからも母と丁寧に向き合っていきたいと思っています。