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帰宅困難なお出掛け

Coco

2025.12.01

母の帰宅困難なお出掛け(いわゆる徘徊)が始まったのは、2016年ごろでした。
今思えば2年ほど続いたのだと思いますが、当時は「いつから」と言えるほど明確ではなく、気づいたときには日常の中に帰宅困難なお出掛けが入り込んでいました。

最初の出来事は、夕方にケアマネ事務所からかかってきた電話でした。
「お母さまが隣町で保護されています。社協にいるので迎えに行ってきます」
その一言で、胸がざわつき、仕事どころではなくなりました。
私は早退し、ただただ不安な気持ちでケアマネを待ちました。

その後、母の行動は少しずつエスカレートしていきました。
キッチンの鍋やざるがご近所にばら撒かれていたり、
ゴミの日でもないのにゴミを出したり、
帰宅途中にそれを回収して歩くのが、いつの間にか“日課”のようになりました。

その頃はまだ、「これが徘徊なんだ」とすぐには気づきませんでした。
ただ、何かが違う、何かがおかしい──そんな感覚だけが積み重なっていきました。

やがて、母が家に帰れなくなることが増え、警察にお世話になる回数も増えていきました。
警察に通報すると私は“自宅待機”になるため、自分で探しに行けません。
“動きたいのに動けないもどかしさ”は、不安をさらに強くしました。
電話が鳴るたびに心臓が縮むようで、夜が来るのが怖かった時期です。

訪問看護師やケアマネ、友達に話しても、心のどこかで「対策が欲しい」と思っていました。
でも、返ってくるのは励ましや同情で、具体的な解決策ではありませんでした。
相談というより、“ただの報告”のようで、私の不安は誰に預けても軽くなりませんでした。

帰宅困難なお出掛けは、外を歩くという行動ではなく、
私の心の中に大きな影を落とした時間でもありました。
いつ帰ってくるのか、無事なのか、どこにいるのか──
その恐怖は、今でも胸が締めつけられるような思い出として残っています。