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「おひとり様介護」村田くみ著

Coco

2025.11.03

東日本大震災のあと、2011年の春ごろ。
近所の本屋さんで、何となく本棚を眺めていたときに、村田くみ先生の『おひとり様介護』という本が目に入りました。
そのタイトルに吸い寄せられるように手に取って、気づけばレジに向かっていました。

私はシングルで、そのころから「介護」という現実を意識し始めていました。
ずっと心の中にあったのは、「他の人はどうしているんだろう?」という疑問でした。
情報収集やお金のこと、制度のこと……。
誰にも聞けないまま悶々としていた私に、その本は“同じように悩みながら介護している人たちの存在”を教えてくれました。
ページをめくりながら、「私と同じ思いの人がいる」とわかって、胸が熱くなり、一気に読み終えました。

本の中で紹介されていた「介護者支援団体」という言葉に惹かれました。
そして、NPO法人ケアラーサポートネットワークセンター・アラジンが主催する「娘サロン」という、自助グループの存在を知りました。
「そこには、“他の人”がリアルにいるんだ」と気づいた瞬間、胸の奥が動きました。

ただ、私は“傷の舐め合い”のような空気が苦手で、すぐに行動には移せませんでした。
それでも、「合わなかったら一生行かなければいい」と腹をくくって、思いきって参加しました。
結果は――行ってよかった。
あの一歩が、人生を変えました。

娘サロンには、私よりもっと大変な介護を経験されている先輩方がたくさんいて、みんなが明るく、やさしかった。
「あなたが頑張ってきたことは何一つ間違ってないわよ」と言ってもらえたとき、涙がこぼれました。
制度の話になると、「そうだよねー、わかんないよねー」と共感しながら、それとなく説明してくれる。
いま思えば、あれが“寄り添う”という姿勢だったのだと感じます。

娘サロンに通ううちに、少しずつ自分を取り戻していきました。
そして、ある日ふと思ったのです。
「私も先輩たちのように、誰かを支える側になりたい」と。
生まれて初めて、「心からやりたい」と思えることに出会えた――その瞬間を、いまも鮮明に覚えています。