【第10回議事録】介護をしながら働き続ける〜施設入所という選択肢

2015年05月16日

今日の参加者

[日時] 5月16日(土)14:30から [場所] 新高円寺・アラジンのケアラーズカフェで行いました。 [参加者] 女性15名、男性5名。年齢層は20代から50代。 ゲストに有料老人ホーム情報館 二子玉川入居相談室室長の木村利之様をお招きしました。 また、海外からのオブザーバーもありました。

「施設入所」を考えたことはありますか? それはどんな時ですか?

・「ゆくゆくは…」と考えている。 土日は自分が世話をしているが、日々症状が進行しているので心が折れそうになる。 とくに下の世話がものすごく堪えるので、自分の身が保たない。 ・世話をしていると自分が犯罪者になってしまいそうで切実。逆に自分が引っ越すことにした。 ・介護を家族にまかせきりだった。自分も参加したが急に手を差し伸べるのは難しい。 そこで施設を探すことにした。 ・施設探しは具体的にはやっていないが、みんなが疲れてきている。 去年は対応できたことが今年はもう無理ということもある。 ・在宅で看るつもりだったが、緊急入院したことがきっかけで選択を迫られた。 特養は1,000人待ちと言われたがそもそも胃管栄養はNG。療養型病院に入れた。 施設を探しているときは全く情報がなく闇の中を這っているようだった。 ・介護と仕事の両立の意思はあったが在宅ではつぶれてしまうと思った。 しかし持病があったがゆえに入所させても3カ月程度では意味がない。 それぐらいなら訪問サービスを使いながら自宅で看取った方がいいと思った。 ・両親は賃貸住宅だが、いつまで居られるか分からないので知識があれば安心できる。 自分でどこまでできるか心配なので、施設に居られるなら安心かも。 ・ショートステイで繋いで、結果的に老健に入れた。 病院も入退院を繰り返し、お金がかかった。 ・両親ともに介護状態のため施設を考えたが、自分が失職したため在宅で看ることになり、かなり大変だった。 9か月頑張ったが自分の体が持たない、全員共倒れになると思い、施設を検討した。 近所の施設をすべて見て回り、候補の片端から申し込んだ。 ・自分も犯罪者になりそうなギリギリの精神状態で、お互いのためにならないと思った。 しかし人からは「施設は姥捨て山だ、お母さんは向いてないから不幸になる」と言われ、一体どんなところかと思っている。 ---------------------------- 施設入所はみなさん頭のどこかで常に考えているようでした。 でも、そもそも「入所」とはどういうことなのか、どういう場所があるのか、また医療処置のある場合、どのようにして施設を探したらいいのか、そういう想いも抱えていらっしゃるようでした。 今日は参加できないメンバーさんから質問があったので、伺ってきました。 「あなたのお母さんはまだそんな状態ではない」と言われたそうだが、誰がその状態を決めるのですか? <講師コメント> 実際に自分の目で見て確認するものなので、周りの意見で決めてはいけません。 ただ、在宅で家族なら出来てもホームではできない対応(食事、医療)はまだあります。 そういうのも含めて、いまから色々と見て回るのがいいでしょう。

有料老人ホーム紹介相談員と「施設入所の選択肢」を考えます。

(参加者の質問にお答えいただきました。) 『「今から予約をした方がいい?」とケアマネに聞いたら、まだそんな時期じゃないと言われた。その時期になってから予約したら順番待ちになってしまうのでは?』 (講師) ケアマネは、サービスを組み合わせれば在宅で十分やれると考えています。でも家族の状況は家庭によって様々なので、要介護者の状態だけでは決められません。 民間も近年は中学校と同数くらいできています。お金を出せばいいサービスを受けられますが、収入に見合ったレベルの施設を選ぶのがよいと思います。 『制度が変わったため負担が大きい』 (講師) 特養の方が負担は少ないように思えるものの、食費・居住費を+αで取るようになりました。 結論として収入によっては入れないと考えた方がいいかもしれません。 できるだけ介護家族を助けようという取り組みはありますが、まだ追いついてないのが現実です。 『介護者は在宅介護が切羽詰まった時に入所を考えるが、相談所としてはどう思う?』 (講師) 相談所へは入所の意思を固めてからいらっしゃるので、入所時期を決めるための相談となります。 入所を決断するきっかけとなるのは、食事とトイレができなくなったときが多いようです。 『仕事が繁忙期の時だけや、介護者の息抜きのためなど、ショートステイのような使い方は可能?』 (講師) 民間は終身が基本ですが、空きがあればショートの受け入れもします。 法改定で金額が抑えられたので、使いやすくなっています。 ただし診断書や面談が必要なので、緊急対応はできません。1ヵ月ぐらい余裕を持つといいでしょう。 『民間ですごく高いところを見に行ったらホテルのようだったが、特養とはどう違うのか』 (講師) 想定される居住年数の違いが、金額に反映されます。 自立できる人向けに、マンション住まいで介護付きというタイプもあります。 特養は、(寝たきりのような介護度が高い方の)介護をすることが前提です。 民間施設において、金額の高さは介護要員の手厚さを意味します。 看護付きも、日中だけでなく夜間も常駐すると高額になります。 そこまでの手厚さが不要な段階から、安心のためにお金を払って入居するか、必要になってから特養等に入れるかという考え方もありますね。 『母が施設もデイも行きたがらない。例えば「改築するから一時的に引っ越しましょうね」という口実にしたら協力してくれるか?』 (講師) 本人が納得することが重要なので、あの手この手で支援者は協力してくれます。 『施設に向かない人柄だと追い出されたりしないか?』 (講師) ある程度プランを尊重してくれるような、個別対応できるホームをお勧めします。 『食事の制限がある場合は?』 (講師) 対応するところもなくはないですが、100%とは言い切れません。 -------------------------------------------------------------- 『施設に入れたがゆえに感謝されたことは?』 (講師) 入居から3カ月後にアンケートを取っていますが、家族からは「関係性がよくなった」「24時間顔を合わせていた頃よりも話す時間が増えた」などのご意見をいただいております。 また、施設を訪ねて要介護者にもお聞きすると、初めは「捨てられちゃった」とおっしゃるものの、落ち着けば笑顔のある生活をしていらっしゃいます。 -------------------------------------------------------------- 今日は「施設入所」という選択肢を考えてみました。 介護者の不幸は目の前の事象に振り回され選択肢が見えなくなること。 いまのうちから情報収集をして、自分のなかで選択肢をもっておくことは大切ですね。

まだ何も知らなかった介護初期の自分に、いまアドバイスをするとしたら?

・固定観念を持たない、いろんな人の聞く耳を持つこと。 「無理をせず、助けを求めなさい」と言いたい。会社にはカミングアウトした方がいい。 ・情報を見極める。 相談相手がひどいことを言ったとしてもいったん腑に落として、そういう相手も仲間にしていく努力も必要。 ・親の変化や衰えていく姿を見るのは辛いし戸惑ったりするだろうけど、 出会っていく人が自分自身を支えてくれるし、大事な資源になる。 ・ほめながら頼みごとをする。 自分も通る道なので、プロジェクトとして考えれば前向きに取り組める。 ・始めは誰でも初心者、最終的にはプロになる。 悩まずに地域や周りに打ち明けて力を借りるのがいい。 ・ぽんと肩をたたいて「気楽にいこうよ」と言いたい。 黒い感情を持っても時間が解決する。 ・周りに親切にしてくれる人は確かにいるが、社会一般には親切じゃない人の方が多い。 良いことも悪いことも起こるのだから、力を抜いてもいい。 ・将来、社員の5人に一人は介護者。 介護に直面したときにオープンマインドで言えば経験者からの言葉がどんどん出てくるのではないか。 垣根を作らないでどんどん情報を取っていけばいいとアドバイスしたい。 ・親より伴侶を選べといいたい。 シングルなんだからゆとりがあるでしょという目で見られる。 人、家族にやさしくない職場が多い。 ・悪いことを考えても状況の改善にならない。 自分自身の中で選択肢を持って情報を取り寄せて。 前向きに取り組めないことだけれど、メンタル面も試されている。 <最後に、講師からコメント> 介護者の方々を見ていると、必死すぎて、ご自身が倒れたらどうなるの?ととても心配になります。 介護制度は本来介護度の重い方向けのものでしたが、軽い方が積極的に利用するようになり、財源が不足して公的サービスが削られました。 その分家族が在宅で見なければならず、仕事と両立してる人向けの制度とは言えなくなったので、民間サービスを柔軟に使うようにしてもらいたいと思います。

雑感

という感じで 「第10回働く介護者おひとり様介護ミーティング」は無事に終わりました。 途中、スカイプの調子が悪くなり、落ち着かない雰囲気になってしまったことを、この場を借りてお詫び申し上げます。 「入所」と一言で言っても種類は多いし、制限も多いです。ただ、社会資源を上手に活用しなければ仕事と介護の両立は難しいのも現実です。「何のために、何をどのように活用するのか」と、目的をしっかり持つことも重要だと思います。 介護者はともすると要介護者を優先した人生を歩んでしまいます。まずはご自身の人生をどうしたいのかを考え、そのうえで社会資源を上手に活用しましょう。 講師の有料老人ホーム情報館 二子玉川入居相談室室長の木村利之様、お忙しいところご協力いただきありがとうございました。

お知らせ

このミーティングは「働く介護者・働くシングル介護者・介護離職者」の現状を 社会問題として「発信」することが目的のひとつです。 NPO法人介護者サポートネットワークセンター・アラジンの全面的なご協力、ミーティング趣旨をご理解してくださった介護者の皆さまのご協力により 多岐にわたるご意見を社会に発信することができます。 なお、この内容はより多くの方にお伝えしていきたいので、皆さんのお力を借りて、 介護仲間や会社の同僚、お友達や担当ケアマネージャーさんなどにも、発信できたら幸いです。