2016年07月16日
【第17回議事録】育児・介護休業法を考える~介護休業と働き方
今日の参加者
ディスカッション参加 3名(女性3名) ファシリテーター 和氣 スタッフ 3名
育児・介護休業法改正内容の確認
平成29年(2017年)1月1日に「育児・介護休業法」が改正施行されます。働く介護者にとってどのような意義があるのか、改正のポイントや関連する注意点を確認しました。 1)介護休業と介護のための働き方 現行法では、「通算93日間の中で、休むことができるまたは時短、フレックス、勤務時間の変更などをできる」という内容でした。改正後は、 ・ 分割して取れる ・ 介護休暇を半日単位で取れる ・ 93日の期間とは別に、介護のための時短・フレックス・勤務時間の変更などができる という風に、「休業」と「働き方」が分けて扱われ、93日間の中で全ての遣り繰りをしなくても住むようになりました。 2)給付金 雇用保険に加入している場合、介護休業給付金が支給されます。現行では賃金の40%ですが、改正法では67%へ引き上げられ、育児休業給付金と同率となります。 一方、社会保険料は自己負担分を休業中も支払う必要があります。育児休業の場合は免除されています。 3)「要介護状態」の定義 育児・介護休業法では、要介護状態のことを「2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」と定義しています。 この定義が分かりにくいということで、判断基準を、要介護2以上や要介護認定調査票の一定項目に該当するといった提案が一時期報道されました。しかし単純に介護度だけで測られると、介護認定のために介護休業を取ろうとした時に介護度がまだついてないという理由で許可されなくなる恐れがあるので注意が必要です。 4)就業規則 従業員が10名以上いる場合は、就業規則を作成することが労働基準法で定められています。 就業規則には、終業時刻や休日・休暇のことを記載しなくてはならず、これらの事項は育児・介護休業法の改正施行に向けて見直ししなければなりません。 一方、日本の企業の98%は中小企業で、さらにその約半分が10名以下の規模です。つまり就業規則を作らなくてよい会社がそれだけ存在しているということです。 なので、自分を守る努力、知る努力は必要です。
介護休業等の予想活用法
改正法で休業の取得などがこれまでよりも融通が効きやすくなると思われますが、どのように活用できそうでしょうか。皆さんに聞いてみました。 <皆さん自身は介護休業を取得しようと思いますか?> ・ 使えるものは使ったほうがいいが、何のために使うのかビジョンを明確にしなければただの休みになってしまう。会社は情報提供はするけれど、自分が知る努力が必要。 ・ 自分の周りでは介護休業取得者は見たことがない。「少しは増えるかもしれない」程度ではないだろうか。 ・ 今日ここへ来るまでにいろんな本を読んだり、先ほどの説明からも発想を得た。まだ要介護者が動ける状態でも介護は必要。しかしどれぐらいの身体状態、精神状態で「要介護状態」なのか、判断がよくわからない。 和氣:要介護状態を判断するためのチェックシートが提案されている。例えば“外出してしまったら戻ってこられない”という設問に対し、”時々“・”常時“などから選択するというように10数項目があり、いくつかに該当すると「要介護度2」と判断するとされている。 人事担当者が介護の状態をよくわかっていない場合、介護度で表現したほうがわかりやすいので安易に「要介護2ですか?」などと問われてしまう。介護度でなく介護状態を説明しても、人事担当者はわからない場合があるので、チェックシートを我々が読み込んで担当者に伝えられるようにならなければならない。 <介護休業の期間をどう使いますか?> 介護休業の取得経験者に聞いてみました。 ・ 自分の場合は1年間取得することができ、主介護者の支援が目的だった。現場に馴染むため、初めの3ヶ月は身体介護をしてしまっていた。それから半年くらいはケアプランの見直しをしていて、残り3ヶ月位でようやく復職に向けて自分が抜けても介護が回るよういろいろ手配した。身体介護をしてしまうと、時間が過ぎるのがあっという間。復職する前提で始めから「自分がいなくても回るように」と環境整備を考えていたら1年もいらなかったかも。 <介護環境の整備に必要な期間は?> すでにビジョンがしっかりしている方に聞いてみました。 ・2週間あれば。リサーチや親族との調整も含めて。それで足りないのであれば方向性が間違っていると思う。例えば在宅介護を考えていて、2週間で環境が整わなければ施設入所に切り替えて考えるなど。 <介護休業は取るべきだと思いますか?> ・ 取ったほうがいいが、会社の空気がそういう雰囲気ではない。 ・ 同感。特に女性の多い職場では。 ・ 韓国では、日本にならい3ヶ月分割で取れるようになった。法律はあるが、本当に休職できることや、法律の存在を知らないのではないか。労働者を主にするのが韓国の特徴。そのためにはお金で解決したり、外国人を住み込みで要介護者の世話をさせたりするようになってきている。しかしそれは問題があると思う。外国人は介護が嫌なので掃除などの家事をするが、要介護者はそれよりも話をしてほしいと望んでいて、それでもめても解雇しにくいということがある。 和氣:これまでは休職は一度きりなので取得のタイミングが難しかったが、分割されるようになったので取れる時は取ったほうがいい。でもあまり長期間取得するのは注意。1ヶ月も休むと会社に行く気力がなくなるし、会社の方で部署がなくなるという場合だってある。長く要介護者と一緒にいると介護に“ハマって”しまう。四六時中見ていないと不安になってしまったり。だから期限があることで、その状態から脱け出すきっかけにもなる。 <いつ使えばいい?> ・ 状態が悪くなったと察知した時に取ったほうがいい。ことが起きてからでないと動かないものだが、起きてからでは周囲の影響も大きいし自分の罪悪感も大きい。 ・ 一人では頑張ってしまう。どうしたら頑張り過ぎるのを止められるか? ・ もう一人介護者を立てるとか、訪問看護師を入れるなど専門家を頼るといい。 ・ 自分は教員だったので使う気になれなかった。自分がいなくなるとその間の代わりがいないし学生にも迷惑がかかる。年度の区切りまで待って辞めた。 ・ …いつ何が起こるかわからない状態なので、取るなら今かもしれない。しかし病院やケアマネと相談しないと結論が出ない。 和氣:使う方も使い方を知っていないといけないし、会社は使い方をわかってないということを踏まえた上でしっかり情報を集め、自分のケースに合った環境整備をする必要がある。
雑感
介護保険法も育児介護休業法も過渡期にあると思います。それゆえに企業も個人も振り回されることもあるかもしれません。逆に考えれば当事者が声を上げれば法律を変えることもできるのかもしれません。 決まった枠のなかで運営をしながらも、次世代のためのより実に沿った法律になるように問題意識を持つことも大事だと感じました。