【第16回議事録】働く介護者を取り巻く環境~医療・介護サービスと折り合いをつける

2016年05月21日

今日の参加者

ディスカッション参加 6名(女性5名、男性1名) ファシリテーター 和氣 スタッフ 4名 オブザーバー 3名

みんなが使っている医療・介護サービス

介護を取り巻く環境の一つ、「医療・介護サービス」について、どうやってそのサービスを知ったか、最初どうやって調べたかをお話いただきました。 【和氣】 医療サービスの利用から始まったので、病院の相談員が糸口となった。 役所での手続きの際に、パンフレットを一通り持ち帰った。 地域包括支援センターに行くように案内はされたが、どんなところかわからなかった。 介護が始まった時、介護についてまた「わからない」ところから勉強しなおした。 現在は介護度3で、月〜木・土及び月1回日曜のデイケア、金曜に訪問看護とヘルパーを入れて限度額いっぱい使っている。ケアプランの見直しはしている。去年の今頃は限度額以内に収めるように依頼していたが、現在は「自費になってもいいのでこのプランで」とお願いしている。 【Aさん】 現在は検討中。介護について調べ始めたとき、「介護」という言葉も知らなかったので、ネットで「認知症」というキーワードで検索した。そうしたら近くに介護者の会があることがわかり、参加していろいろ話を聞いている。 【Bさん】 介護のために住み込みのヘルパーをお願いし、おむつや介護ベッドも利用している。 住み込みなので限度額を超えて高額な自費になっているが、それでも自分が働きたいので、意志を実現するためにはこれが最も良いと考えている。 介護サービスのきっかけは、地域包括支援センターが母の様子に気づき連絡をよこしたこと。フルタイムで働いていたのでなかなか連絡を受け取れず、半年くらいしてやっと手紙を開いてセンターに行った。 大学で福祉心理学科を専攻していたので、「介護」という言葉は知っていたが、自力で調べたわけではなく向こうから見つけてもらったという経緯。 【Cさん】 おばを母が介護していたことがあり、その頃に介護保険制度が始まったので当時の様子を見てきている。 現在は母の介護でショートステイ 、ヘルパー、デイサービス、おむつや杖のレンタルなどを利用している。 杖は四点杖で月50円。レンタル料が安いところをケアマネに見つけてもらっている。ゴミ袋は自治体に申請。そういった工夫はケアマネの技倆によるところが大きいので、良いケアマネを見つけるために多くの施設を見学して決めた。 地域の利用としては、民生委員にお願いして車椅子を無償で借りたりしている。 民生委員は、高齢者だけでなく障がい者やシングルマザーなども気にかけて福祉とつなげてくれる存在なので、いざというときにはお願いすることがある。 施設のサービスで限度額いっぱいなので、超えた額と毎月の収入とを見比べながら、超えてしまったら仕事を入れずに自分が在宅で看るというふうに調整している。ケアマネにも毎月計算してもらっている。 【Dさん】 包括へは母自身が連絡した。長く闘病中だったので将来が不安になったため。圧迫骨折で足が不自由になっていたので介護認定を受けた。始めは要支援1だったので利用できるサービスがほとんどなく、週1回のデイリハと歩行器をレンタル。歩行器は屋内外用にもう1台自費購入。 一時期入院し、要介護2の認定を受けたが、退院してすぐ骨折してまた入院したので介護サービスを使う機会はあまりなかった。その次の退院後は有料老人ホームにショートステイで入ったがすぐ亡くなってしまった。 【Eさん】 職場で介護について話せる雰囲気が全くなかった。情報収集も兼ねて大学院で社会保障を学び、修士論文で介護離職を研究している。それでアラジン介護者フォーラム(*)に行き、介護者のためのNPO法人がたくさんあるということを知った。 *アラジン介護者フォーラム2014「仕事も人生もあきらめない!介護環境づくりのために」 2014年6月開催。主催:NPO法人介護者サポートネットワークセンター・アラジン 【Fさん】 母や伯母は自分たちが介護されていることを隠していた。一人っ子の自分はカウンセリングを受けていたが先生が親身じゃなかったので、ネットで「シングル介護」で検索して調べた。 ----------- 「介護をしている」という自覚がないまま介護している人は多いと思います。 自覚がないと、「介護」というキーワードで検索することもありません。 参加者の皆さんのお話から、まずはその言葉で検索するという一歩が、情報にたどりつく糸口になっているのかなと感じました。

マネジメントの工夫

私たちは仕事と介護を両立しているとはいうものの、ギリギリ辞めてないという状態に過ぎません。辞めないためには、介護をマネジメントしていく工夫が必要です。 (1)マネジメントするにあたりどこで折り合いを付けるか、その基準やこだわりたい点は何ですか? ・ 介護が始まったときは、手厚くやりたい、母を中心になんでもやってあげようとしていた 。しかし介護が長くなると自分は疲弊してくる、母の預貯金は減ってくる。となるとお金のことを考えていかなければならない。車椅子は使う時だけ出先で借りてきたり、体力は使うけど節約の工夫をした。 母が問題行動を起こさず平穏に暮らしてもらうというところに絞って、サービスを組み合わせている。 特養に入れればとも言われるが、自分でできることはまだやっていきたいという思いがどうしてもある。母が家にいるだけで私の気持ちも安らぐ。お金と自分の気持とのバランスをマネジメントしているという感じ。 ・ 母が退院するとき病院もケアマネも在宅介護を進めたが、自分はもう無理だと思った。このままだったら自分が先に死ぬかもしれないと思った。顔を突き合わせていると関係が悪くなる。母は体が不自由なことから我儘をぶつけてくることがあり、わかっていてもこちらも耐え切れず喧嘩になってしまう。包括に頼み込んで有料老人ホームに入ってもらった。また、月3回通院の必要があり、1日仕事になるがしょっちゅう有休をとっていられないので、ダスキンの通院サービスを使った。お金がかかったが自分が楽になれることを優先した。自分ではやりきったという気持ち。 ・ 母は介護イコール施設に入るという認識なので、母の前で介護の話をすると、「家から追い出すつもりか」と怒ってしまう。そんなつもりじゃないし一緒にいるのが一番いいとは思っている。 ・ 一人っ子で母を抱えている。自分は仕事をしていたい。介護も仕事も同じで、限られた時間や知識、資源の中でどう最大限に利用するかを考えている。(自分が動く)時間がないので、人を動かす。ヘルパーさんにいいことを聞いたら、自分で調べる時間がないのでケアマネにお願いして代わりに調べてもらう。ただ、一方的にお願いしてもうまくいかないので、こまめに声かけしたり手作りの差し入れでねぎらったりしている。 前は肩肘張って頑張っていた。甘えていいのよと言われても、大丈夫ですと言い張っていたが、素直に大丈夫じゃないと言えるようになった。すると気持ちよく動いてもらえるようになった。それと、命に関わること以外はある程度割り切る。できないことはできない、見て見ぬ振りをする、そういう割り切りも大切。 ・ 伯母の介護のときはお金があったので、弁護士や家政婦を総動員していた。今は生活保護も考えるほどだが、持ち家があるためにそれだけで余裕があると見られる。深刻さが理解されず家を売ればいいと言われてしまい、追い詰められる気持ちになった 。母は「3人見送ったからもういい、自分で決めれば」と言ってくれるけど、実家の近所の人からは「なんで仕事を辞めてお母さんを見ないの」などと言われてしまう。体力があるうちはいいけれど、段々心のバネが緩んで跳ね返せなくなってくる。 ここで、介護度を下げないための工夫をした方のお話がありました。認定に備えて根回しをしたり、下がった場合には申し立てもしたとのことです。 【和氣】 このような行動を起こせるのは、「自分は働きたい」という絶対的な基準を持っていたからですよね。介護度が下がってももし働き続けられるなら、上下しても構わない。周りと上手にコミュニケーションを取るのも、あくまで自分が働く環境を整えるため。 私の場合は、自分の人生が中心だと考えている。自分の命と母の命(を守りながら)、自分の人生(を大事にする)。でも振り回されることがあっても、母や他者のせいにはしない。環境整備ができなかった自分のせいだと省みて、次を考えるようにしている。 入所を考えたこともあったが、費用の問題ではなくまだ自分が母と一緒にいたかったので、入所は見送った。「自分がどうしたいか」が基準。 (2)皆さんが持つそれぞれの基準を、ケアプランにどうやって組み込むか、またケアプラン通りに執行させるか、その工夫を教えて下さい。 - デイサービスはいろいろなところを母も連れて見学した。何回か利用してみて、準備の負担が大変なことがわかったり、カフェ形式のデイサービスで送迎の制服もカフェ風だと母が遊びに行く感覚で通えるとか、そういうところを探した。また、連絡帳の書き方でどのくらい見てくれているかわかる。担当者会議を面倒でも一度はやる。いろいろなサービスの担当者が集まるので違う意見が出てくる。それを統合して、母にとって最適なものを検討する。 - デイサービスへの通所拒否が強い場合は、それでもお迎えに来てもらっちゃう。「来てくれたのに悪いから」という気持ちにさせる。送迎の時間には門の鍵を締めて、家から出られないようにしている。 - ケアマネにそういう工夫を相談するけど、本人の意志が強いので手が打てない。お母さんへの支援が介護者の支援にもなると言われるけれど、現実はなってない。ケアマネとコミュニケーションを上手く取っていかないといけないのだけど…。 - 仕事と介護の両立を図るのに介護保険サービスを使わなくてすむ方法があれば、それでも構わないかもしれない。でも他人の手は借りなければ難しい。近所や親戚の目が厳しい場合もあるけれど、そういった他人の目を基準にするか、自分の意志を基準にするか、そこがぶれると周りのスタッフもぶれていくと思う。 自分の「こうしたい」という意志を通すにはこのサービスが必要だから、そのスタッフとは仲良くする。仲良くすることで疲弊するならそれは軸がぶれている。自分の人生を大事にするためにマネジメントしているのに、マネジメントすること自体で自分がぼろぼろになるのは本末転倒。 - 自分がどうしたいかを考えるのは難しい。 - 初めは目の前に起きていることに対処するのにいっぱいなので、自分に向き合うのに時間がかかる。初動でパニックになると言われるけれど、パニックを経験しないと自分と向き合わないので、経験は必要かも。でないと中途半端な向き合い方になり、後で後悔するのではないか。 - この歳になると正社員になるのは難しい。スキルを見せれば面接はできるが、年齢で落とされる。就活では介護していることはさらっと言うが、「介護チームがしっかりしているので問題ありません」と言い切る。ブランクがある理由を質問されるので、介護だとは言うが苦労したとは言わない。 - 介護はそれだけで一つのスキル。営業と同じで嫌な相手でもお願いしなければならなかったり、マネジメント能力が要求される。(介護者として見てきたことを仕事分野に反映させられるなど)、介護者の経験は価値として認められ始めている。 - 昇進や人事評価の際に、働き方に制限があるというリスクを抱えた人間だと社内に認識されてしまい、この人には仕事を任せられないと窓際に追いやられることがあるのではないだろうか。 - 社会を変えるのは大企業から。そういう会社は、残業ができないとか働き方に制限があるととらえるのではなく「多様性」と取っている。昔は「男性だから」「女性だから」も制限だったが、それが今は外れてきている。多様性がきかない職種もあるかもしれないが、そういう流れにはなってきている。 ----------- 後半は企業が介護をどう評価するかという話になりましたが、企業側としては、成果が出せれば規定通りの働き方でなくても構わないと考えているはずです。しかし、介護休業制度があるからただ使う、というだけでは長い目で見て両立が次第に難しくなります。 また、ITを活用して在宅で働ける環境を整備する企業もありますが、50代・60代には不慣れで使いこなしにくいものです。古い考え方の企業もまだ存在します。ですからこのような世の状態で両立していくには、医療・介護サービスは十分に使いこなしていく必要がありますし、そのためにはしっかりマネジメントするという意識が持つべきではないでしょうか。

雑感

今日も今日とて濃いミーティングでした。初めて参加してくださった方ももりもり発言してくださり、盛り上がりましたね! 介護保険や働き方など、いまはとても過渡期にあると感じています。そんな過渡期を果敢に、でも笑顔を忘れず前だけを見る介護者の姿は心に響きます。「私も頑張ろう!」って思えます。 他の人の考えや工夫を聞くことは、自分を省みるきっかけにもなります。ぜひぜひたくさんの方にご参加いただきたいと思います。